巻き戻し無し

昔、大切にしていた時計があった。
いつも肌身離さず持っていた。

しかし、あるとき忽然と姿が
見当たらない。
探しても探してもいない。


あの時計は、離れて行ってしまった。


大切に思っていたのは俺だけで、
あまり手入れされない時計は、
或いは気分を損ねて、また次の
オーナーを見つけに旅立ったの
かもしれない。


大切なもの、大好きなものが
目の前からなくなる瞬間、
まるで割れた風船かのように
爆音とともに感情も崩れさる。


戻ってこないかな。
また話せないかな。
色々相談したり、されたり。


どこに行けばいい、
あなたと離れて
今は過ぎ去った
時に問いかけて

長すぎた夜に
旅立ちを夢みた
異国の空みつめて
孤独を抱きしめた

流れる涙を
時の風に重ねて
終わらないあなたの
吐息を感じて…


大好きな歌手の曲の1フレーズ。

大好きなものを見つけられないと
まさにこんな感じだな。


あの大切な時計はおそらく
戻ってこないだろう。
あの大切な時計はおそらく
時を巻き戻しはしないだろう。


時計は前に時を刻むしかない。
運命だろうし、巻き戻しはかえって
迷惑かもしれないね。


大切なものは、その思い出や
フォルムと共に…





そっと心にしまっておこう…